国際相続
こちらのページでは、在日外国人の相続手続きについて、よくある質問とその解説をまとめましたので、ご参考になさってください。
Q1
父親は在日韓国人、母親が日本人、子ども2人が日本国籍の場合で、先日父親が亡くなりました。父親名義の不動産が本国と日本にありますが、相続は、どうなりますか。この場合、父親が在日アメリカ人(出身地:ニューヨーク州)で父親名義の不動産が本国(ニューヨーク州)と日本にある場合だと、相続は、どうなりますか。
A1
1)在日外国人の方の場合
在日外国人の方の場合、相続にあたり「どこの国の法律が適用されるのか」ということを、検討しなければなりません。法の適用に関する通則法(以下「通則法」といいます。)36条によれば、原則として、亡くなった在日外国人の方が国籍を有する国(本国)の法律が適用されます。
ただし、通則法41条により、亡くなった在日外国人の方の本国法において、日本法が適用されることが指定されている場合は、日本法が適用されることになります。
したがって、亡くなった在日外国人の方の本国法がどうなっているかをみる必要があります。
2)父親が在日韓国人の場合について
韓国法では、相続は被相続人の本国法による旨を定めているので、原則として、父親名義の不動産は全て、韓国法にしたがって相続されます。
しかし、父親が一定の要件を充たす遺言をしていた場合は日本法が適用されます。
したがって、
①亡くなるまで日本に住んでいた父親が、相続について日本法を適用することを定めた適法な遺言を作成していた場合は、父親名義の不動産は全て日本民法に従って相続されることになります。
②父親が、不動産に関する相続について不動産の所在地法を適用することを定めた適法な遺言をした場合、韓国の不動産は韓国法に従って相続され、日本の不動産は日本民法に従って相続されることになります。
3)父親が在日アメリカ人の場合
父親がアメリカ人だと、通則法36条により父親の本国法であるアメリカ法が適用されることになります。アメリカは州ごとに法律が異なりますので、通則法38条第3項により、父親の出身地であり不動産があるニューヨーク州法が適用されることになり、ニューヨーク州法の国際私法では、不動産の相続については、不動産の所在地法が適用されます。
したがって、父親名義のニューヨークにある不動産はニューヨーク州法に従って相続され、日本にある不動産は日本民法にしたがって相続されることになります。
Q2
A2
相続放棄については、裁判例によれば、
① 夫自身が、亡くなるまで日本国内で生活していた場合
② 妻が、夫が亡くなるまで日本国内で生活していた場合
③ 夫の債務が日本国内に存在する場合
のいずれかに当たれば、日本人妻は日本の裁判所で手続をすることができると考えられます。
ただし、在日外国人の夫の相続放棄の有効性等については、亡き夫の本国法が適用されます。ですから、亡き夫の本国法において、相続放棄の期限が定められているような場合には、相続放棄の期限を過ぎると相続放棄はできなくなりますので、注意が必要です。
つまり、相続放棄の手続を行うために日本の裁判所を利用することはできますが、相続放棄の手続が有効かどうかは、亡き夫の本国法次第ということです。
日本人妻が日本の裁判所で相続放棄の手続をする場合の方式としては、日本法の方式に従い、相続を放棄する旨を家庭裁判所に申述(民法938条)してもよいですし、亡き夫の本国法の方式に従っても構いません。
Q3
父親は在日韓国人、母親は日本人、子供2人は日本国籍ですが、父親が亡くなりました。相続人間で遺産分割の話がまとまりません。この場合、遺産分割手続は、どうすればよいですか。日本の家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てられますか。
A3
遺産分割調停については、裁判例によれば、
① 父親が、亡くなるまで日本国内で生活していた場合
② 父親の遺産が日本国内にある場合
のどちらかに当たるのであれば、日本の家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることができると考えられます。
そして、在日韓国人である父親の相続については、本国法である韓国の法律が適用されますので、遺産分割調停は、韓国の民法に則って行うことになります(通則法36条)。
韓国民法では、母親と子供2人が共同相続人となり、法定相続分は、母親が2分1、子供が各4分の1となりますので、このことを前提に調停成立を目指すことになるでしょう。
もし父親が韓国に不動産を所有していたような場合でも、日本の裁判所で、韓国の不動産も相続財産の範囲に含まれるとして、遺産分割の調停を行うことができるという下級審判例があります。
けれども、日本の家庭裁判所の調停調書を根拠として、実際に韓国の不動産について登記手続を行うことができるか等は別途問題となりますので、韓国の法律や税務に詳しい専門家と協議をしながら手続を進めることが望ましいでしょう。
Q4
在日外国人が,日本に有する不動産や預金などの財産について,遺言書を作成したいと考えています。どのような方法ですればよいですか。
在日外国人が,海外にある財産について,遺言書を作成したい場合は,どうすればよいですか。
A4
(1)有効な遺言をするには,まず,遺言が適切な方式で作成されていなければなりません。
遺言する方の遺言作成時の本国法や,遺言する方の遺言作成時の住所地の法に合っていれば,適切な方式としています。
したがって、在日外国人の場合、同人の本国法か,あるいは日本法に適合する方式であれば、問題はありません
ただ,日本にある財産については,外国法方式の遺言ですと遺言を執行するときに、関係者(法務局や銀行)が混乱する恐れがありますから,日本法方式での遺言を作成されたほうがよいと思います。
自筆証書遺言は,日本語でなくても,外国語で大丈夫です。押印は,法律上,外国人は署名で足りますが,押印は拇印でも有効ですから,拇印はしておいた方がいいと思います。
また,公正証書遺言は,手間と費用がかかりますが,無効になる可能性が低い遺言書方式です。公正証書遺言は,日本語で作らなければなりませんので,遺言する方が日本語の読み書きができないときは通訳を立ち会わせてください。また,外国人登録証明書や本国政府発行の旅券などを用意してください。
(2)つぎに,適切な方式でも,遺言が有効に成立し(遺言能力や,意思表示の錯誤・取消の問題),遺言の効力が発生し,遺言内容が有効でなければなりません。
これについて,法は,「遺言の成立及び効力は,その成立の当時における遺言者の本国法による。」「相続は,被相続人の本国法による。」としていますので,これらは遺言する方の本国法によって判断されます。
(3)海外にある財産については,在日外国人の遺言が日本の裁判所で有効と判断されても,実際に執行するのは、海外の国ですので,あなたの遺言が承認されるかは,その国の法律によらざるを得ません。
ですから,海外にある財産については,日本法方式の遺言以外に,現地の弁護士と相談して,その国の法律に基づく遺言を別に作成しておいた方がよいです。
Q5
日本人女性が,在日外国人と結婚し,日本で生活していましたが,先日夫が亡くなりました。夫の自筆証書遺言がある場合,どうすればよいですか。
A5
まず亡き夫の生前最後の住所地を管轄する家庭裁判所に,亡き夫の自筆証書遺言の検認を申し立ててください。
自筆証書遺言を保管している人が,遺言の検認をしないまま遺言を執行したり,封印された遺言書を検認手続以外で開封してしまいますと,5万円以下の過料を課せられることがあります。
また,検認のない自筆証書遺言で不動産の相続登記申請をしても法務局は受理してくれません。
亡き夫の遺言の中に,海外の預金や不動産などが含まれているときには,海外の国の銀行や法務局から,その国の相続手続(「プロベート」といいます)を行うよう求められることがあります。
海外にある海外の預金や不動産の移転・処分をするときに,日本の 家庭裁判所が出した検認調書に,翻訳を付けて提出すれば足りるのか,それとも別にプロベートを取らなければならないかは,外国の法律や遺産の種類によってケースバイ・ケースです。
そのときは,現地の弁護士に相談して,対応を検討されたほうがいいと思います。
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この記事の監修者
弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)
小林 幸与(こばやし さちよ)
〇経歴
明治大学法学部卒業、昭和61年に弁護士登録。現在は第一東京弁護士会所属の弁護士に加え、東京税理士会所属の税理士、日本FP協会認定AFP資格者。
日弁連代議員のほか、所属弁護士会で常議員・法律相談運営委員会委員・消費者問題対策委員会委員など公務を歴任。
豊島区で20年以上前から弁護士事務所を開業。現在は銀座・池袋に事務所を構える「弁護士法人リーガル東京・税理士法人リーガル東京」の代表として、弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナーの三資格を活かし活動している。