【相続Q&A】会社への援助が被相続人に対する寄与と認められることはありますか?
次のケースの場合、寄与分を主張できますか。
父が経営していた会社が多額の借金で経営不振になったため、長男が同会社所有不動産を高額で購入するなど多額の資金援助をして、同会社を倒産から救った場合、父が亡くなった後に寄与分を主張することは可能でしょうか?
会社に対する援助が被相続人に対する寄与と認められる余地はあります。
長男が資金援助をした相手方は、形式上は被相続人と別人格である会社であるため、被相続人に対する寄与とはいえないようにも見えます。
しかし、被相続人がその個人資産を失えば会社の経営が危機に陥り、他方、会社が倒産すれば被相続人は個人資産を失うといった、会社と被相続人の間に経済的に極めて密接な関係があり、会社に対する具体的な資金援助と被相続人の資産の確保との間に明確な関連性がある場合には、会社に対する援助が被相続人に対する寄与と認められる余地があります。
今回のケースにおいて、会社と父の間に、父が個人資産を失えば会社の経営が危機に陥り、会社が倒産すれば父が個人資産を失うといった経済的に極めて密接な関係があるかどうかが一つのポイントとなります。
そして、そのような関係が認められる場合、長男の多額の資金援助により同会社を倒産から救っているので、長男の具体的な資金援助と父の資産の確保との間に明確な関連性があるといえ、会社に対する援助が父に対する寄与と認められる余地があるでしょう。
同様の事例について、高松高裁平成8年10月4日決定は、寄与分を認めています。
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この記事の監修者
弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)
小林 幸与(こばやし さちよ)
〇経歴
明治大学法学部卒業、昭和61年に弁護士登録。現在は第一東京弁護士会所属の弁護士に加え、東京税理士会所属の税理士、日本FP協会認定AFP資格者。
日弁連代議員のほか、所属弁護士会で常議員・法律相談運営委員会委員・消費者問題対策委員会委員など公務を歴任。
豊島区で20年以上前から弁護士事務所を開業。現在は銀座・池袋に事務所を構える「弁護士法人リーガル東京・税理士法人リーガル東京」の代表として、弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナーの三資格を活かし活動している。