相続トラブル防止のために ~相続発生前と発生後でやるべきこと~
相続問題の発生前の解決策
相続問題の発生前に取るべき対策としては,特定の財産を譲りたいと考えている人に、持ち戻し免除をして財産を生前贈与したり、死因贈与契約をして不動産に仮登記を付すとか、遺言代用信託を利用するとか、生命保険を活用する方法があります。事前に遺言書を作成しておくのが一般的な方法です。
もっとも,せっかく遺言書を作成してもその内容が不明確であったり,不動産などの財産の特定が不十分だったりすると,その解釈をめぐって相続人同士で争いになり,遺言者の意思に従った相続を実現できない場合があります。
遺言書の作成にあたっては,後日紛争が起きることのないような記載内容にする必要があり,弁護士に相談しながら作成すると良いでしょう。
また,被相続人から見て兄弟姉妹以外の相続人(配偶者や子,親など)には,遺言によっても侵害されることのない「遺留分」があります。そのため,特定の相続人の遺留分を侵害するような贈与契約や遺言を作成すると,その相続人が遺留分を主張して他の相続人ともめる可能性があるので,これを避けるためにも,相続対策に詳しい弁護士に相談すべきです。
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相続問題の発生後の解決策
相続が既に発生しており,遺言書がない場合には,相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。遺産分割協議の前提として,誰が相続人になるのかということと,何が相続財産になるのかということを確定する必要がありますが,相続人については戸籍謄本等で,相続財産については登記事項証明書や預金の残高証明書等で確認をすることになります。被相続人の家族関係が複雑であったり,財産の全容が明らかでない場合には,弁護士に相続人や相続財産の調査を依頼することもできます。
相続人と相続財産が確定し,相続人全員の話し合いで合意ができた場合には,遺産分割協議書を作って合意内容を記載します。遺産分割協議書を作成する場合も,後になって記載内容をめぐって相続人間で争いになる可能性があるので,事前に弁護士に相談するのが良いといえます。
相続人間で合意ができない場合は,調停や審判という裁判所の手続を利用して相続の紛争解決を目指すのが一般的です。調停や審判では,相続人の特別受益や寄与分の有無が争いになることが多いですが,どうようなものが特別受益又は寄与分として認められるか,どのような証拠があれば特別受益又は寄与分が認められるかという点は専門的な知識を必要とする事柄ですので,弁護士に代理を依頼しましょう。
相続問題は法律や税務で問題を多く含んでいるので,相続問題の発生前においても,発生後においても,まずは相続法や相続税に詳しい弁護士に相談するのが良いでしょう。
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この記事の監修者
弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)
小林 幸与(こばやし さちよ)
〇経歴
明治大学法学部卒業、昭和61年に弁護士登録。現在は第一東京弁護士会所属の弁護士に加え、東京税理士会所属の税理士、日本FP協会認定AFP資格者。
日弁連代議員のほか、所属弁護士会で常議員・法律相談運営委員会委員・消費者問題対策委員会委員など公務を歴任。
豊島区で20年以上前から弁護士事務所を開業。現在は銀座・池袋に事務所を構える「弁護士法人リーガル東京・税理士法人リーガル東京」の代表として、弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナーの三資格を活かし活動している。