自筆証書遺言の無効確認訴訟をされたが有効な遺言と認められた事例
相談者
東京都在住 森下様(仮名・60代・主婦)
相談内容
森下様の母親(亡時子様―仮名)は、年齢90歳以上の高齢者であり、病気で亡くなりましたが、亡くなる数ヶ月前に、森下様に預金を全て相続させる内容の自筆証書遺言を作成していました。亡時子様の相続人は、森下様と同人の実兄(川島様―仮名)の二人でした。
リーガル東京は、森下様から亡時子様が作成した自筆証書遺言の検認手続を依頼されましたので、検認手続を完了させましたところ、森下様は、兄川島様の依頼した弁護士から「遺言は無効である。仮に有効でも遺留分減殺請求する。」との内容証明郵便が来た上、亡時子様の取引銀行にも遺言無効の通知をされ、遺言に基づく預金引き出しができなくなりました。
亡時子様の遺産のほとんどは預金でしたので、森下様は遺言が無効でないことを認めた判決をとらないと預金全部の引き出しができない状態になりました。
その後、川島様の依頼した弁護士が、森下様を被告として自筆証書遺言の無効確認訴訟を提起しましたので、リーガル東京が、この訴訟の代理人になりました。
弁護士の対応と結果
原告川島様の代理人弁護士は、自筆証書遺言の無効の理由として、第一に遺言は亡時子様の自筆でなく偽造されたもので無効であること、第二に遺言に加筆箇所があったことから方式を欠く遺言で無効であることなどを主張してきました。そしてその裏付け証拠として、生前の亡時子様の手書きだとする紙切れに書かれた乱雑文字を出してきたり、亡時子様の病状では手書きできる状態でなかったとする医師の意見書を出してきたりしました。
また遺言の「娘森下に預金を相続させます」と書かれた文の「森下に」と「預金」の間の右横に波括弧を書き文を挿入する形で「すべての」の文字を加筆しているのは遺言の方式を欠く遺言であり、解釈として全部の預金を相続させたものではないと主張してきました。
これに対し、当方は、亡時子様の自筆の手紙を探し出し、対象文書として裁判所に提出し、筆跡鑑定申立をしました。また当方は遺言に少しの方式違反があっても遺言全体が無効になるわけではないことや、遺言の内容解釈は遺言作成の経緯などを考慮し遺言者の意思を合理的解釈すべきだと主張しました。筆跡鑑定の結果は亡時子様の自筆の遺言だとされ、当方の主張が全面的に認められました。兄川島様は控訴することなく、遺言が有効であることの判決が確定し、
森下様は安堵しておりました。
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この記事の監修者
弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)
小林 幸与(こばやし さちよ)
〇経歴
明治大学法学部卒業、昭和61年に弁護士登録。現在は第一東京弁護士会所属の弁護士に加え、東京税理士会所属の税理士、日本FP協会認定AFP資格者。
日弁連代議員のほか、所属弁護士会で常議員・法律相談運営委員会委員・消費者問題対策委員会委員など公務を歴任。
豊島区で20年以上前から弁護士事務所を開業。現在は銀座・池袋に事務所を構える「弁護士法人リーガル東京・税理士法人リーガル東京」の代表として、弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナーの三資格を活かし活動している。