全遺産を長男に相続させて高額の代償金を取得した事例
相談者
神奈川県在住 坂本様(仮名) 60代女性 主婦
相談内容
坂本様(仮名)は,母親乙が亡くなり,その相続人は長女の坂本様と長男甲の2人でした。
長男甲は、10年以上前に東京都内にある亡父所有の土地を、母親乙と共同相続していました。また父親の生存中に父親所有の同土地上に長男甲名義の5階建て賃貸マンションを建築し、賃料収入を得ていました。また長男甲は父親が経営していた同族会社を承継し、同社の代表取締役でもありました。
母親乙は、父親の死後、長女の坂本様が引き取り、面倒を見ていましたが、母親が亡くなったことで、長男甲から、「賃貸マンションの建っている土地を相続すると、相続税が2人で1億5000万円以上かかる。坂本家では相続税を払えないだろうから、相続放棄したらどうか。」とか「相続放棄してくれれば、亡父から(坂本様が)相続した同族会社の株式を代金5000万円で買ってもよい。」などと言ってきました。
坂本様とすれば、亡父の相続の時は、母親乙の頼みで言いなりに遺産分割協議書に署名押印したけれど、亡母親乙の相続ではキチンと権利主張したいと考えていました。
そこで坂本様は,弁護士法人リーガル東京に相談に来られ,弁護士法人リーガル東京に遺産分割交渉を依頼しました。
弁護士の対応と結果
坂本様の母親の遺産の主なものは、都内にある約2000㎡の土地持分3分の1と同族会社の株式(相続税評価額約3000万円)でした。
弁護士法人リーガル東京は、坂本様の依頼により、長男乙に受任通知を送付したところ、長男乙も弁護士に依頼し、弁護士名での回答書が来ました。長男乙側弁護士の回答内容は、都内にある土地の持分と同族会社株式を現物分割するという提案でした。
けれども坂本様には、約8000万円もの相続税自己負担分を払えるだけの金融資産がありません。そのため、母親の全遺産を長男乙に相続してもらい、その代わりに坂本様の相続分に相当する代償金を、長男甲が坂本様に支払ってもらうという内容の解決を希望していました。
リーガル東京が長男乙の弁護士と何度か交渉した結果、長男乙が代償金を払う方向にできましたが、代償金額の交渉が難航しました。
長男乙名義の賃貸マンションが建築されている土地の持分については、時価評価で見解が対立したため、リーガル東京では不動産鑑定士に簡易鑑定をしてもらい、かつ長男の特別受益(地代を母親に一切払わず土地を賃貸マンション敷地に利用していた点についての特別受益)を主張するなどして交渉を重ねました。その結果、長男乙から坂本様の希望額に近い約4億円もの代償金額を取得することができました。
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この記事の監修者
弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)
小林 幸与(こばやし さちよ)
〇経歴
明治大学法学部卒業、昭和61年に弁護士登録。現在は第一東京弁護士会所属の弁護士に加え、東京税理士会所属の税理士、日本FP協会認定AFP資格者。
日弁連代議員のほか、所属弁護士会で常議員・法律相談運営委員会委員・消費者問題対策委員会委員など公務を歴任。
豊島区で20年以上前から弁護士事務所を開業。現在は銀座・池袋に事務所を構える「弁護士法人リーガル東京・税理士法人リーガル東京」の代表として、弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナーの三資格を活かし活動している。