遺留分が侵害されたら何をすべきですか?
遺留分侵害額請求をすることで、遺留分に相当する金銭を受け取ることができます。
1.遺留分侵害額請求とは
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に保障された、最低限の相続分のことです。
直系尊属のみが相続人である場合は法定相続分の3分の1が、それ以外の場合は法定相続分の2分の1が遺留分として保障されています。
例えば、長男と二男が4,000万円の遺産を相続する場合に、「長男にすべての遺産を相続させる」という遺言書があったとすれば、二男は1,000万円(4,000万円×1/2×1/2)の遺留分を侵害されています。
このとき、二男から長男に対して1,000万円(遺留分侵害額)の支払いを請求することが認められ、この請求のことを「遺留分侵害額請求」といいます。
2.遺留分侵害額請求の方法と流れ
遺留分侵害額請求の方法に、特に決まりはありません。遺留分を侵害している相続人に対して、遺留分侵害額の支払いを求める旨を伝えるだけです。口頭でも法律上は有効ですが、実務上は、内容証明郵便で請求書を送付するのが一般的です。
当事者同士で話し合いがまとまれば、支払額や支払期限、支払い方法を明確に取り決めた上で、合意書を作成しましょう。
当事者だけの話し合いで解決できない場合には、家庭裁判所へ遺留分侵害額請求調停を申し立てます。調停委員を介してさらに話し合いを進めて、合意による解決を目指すことになります。
調停でも合意に至らなかったら、家庭裁判所へ遺留分侵害額請求訴訟を提起する必要があります。訴訟では、遺留分を侵害されたことと、その金額を主張するとともに、その裏付けとなる証拠を提出することが必要です。
勝訴判決が確定したら、強制的に遺留分侵害額を回収できるようになります。相手方が任意に支払わない場合には、強制執行を申し立てて相手方の財産を差押えることが可能です。
3.遺留分侵害額請求の注意点
遺留分侵害額請求は、相続の開始と遺留分を侵害されたことを知ったときから1年以内に行う必要があります。1年が経過すると、請求権が時効にかかってしまうことに注意が必要です。相続開始から10年が経過したときも時効となります。
また、相続開始から時間が経過した後では、相手方が遺産を使ってしまい、遺留分侵害額請求が認められても相手方に支払い能力がないことにもなりかねません。
そのため、遺留分の侵害に気付いたら、早急に遺留分侵害額請求を行うことが重要です。お困りの際は、早めに弁護士へご相談ください。
この記事の監修者
弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)
小林 幸与(こばやし さちよ)
〇経歴
明治大学法学部卒業、昭和61年に弁護士登録。現在は第一東京弁護士会所属の弁護士に加え、東京税理士会所属の税理士、日本FP協会認定AFP資格者。
日弁連代議員のほか、所属弁護士会で常議員・法律相談運営委員会委員・消費者問題対策委員会委員など公務を歴任。
豊島区で20年以上前から弁護士事務所を開業。現在は銀座・池袋に事務所を構える「弁護士法人リーガル東京・税理士法人リーガル東京」の代表として、弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナーの三資格を活かし活動している。