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【相続コラム】遺言無効確認請求訴訟とは?訴訟手続きの方法や、弁護士に依頼するメリットについて解説

被相続人(亡くなった方)が残した遺言書の内容に納得できない場合は、遺言無効確認請求訴訟で遺言の効力を争える可能性があります。

しかし、遺言無効確認請求訴訟の手続きは複雑であり、解決するまでには相応の費用と時間もかかります。

また、遺言書の内容に納得できないというだけの理由で、遺言の無効を主張しても認められません。そのため、遺言無効確認請求訴訟の内容を正しく理解しておくことは重要です。

1: 遺言無効確認請求訴訟とは

まずは、遺言無効確認請求訴訟とは何か、その定義と目的を確認しておきましょう。

遺言無効確認請求訴訟とは

遺言無効確認訴訟とは、遺言が有効か無効かを確認するための裁判手続きです。

その目的は、法的に問題のある遺言に基づいて遺産が分割されることを防止し、公正な遺産分割を実現することにあります。

遺産を相続できる人(相続人)の範囲と順位、各相続人の相続分は民法で定められていますが、被相続人が遺言で遺産分割の方法を指定した場合は、その内容が優先されます。遺言が有効であれば、納得できない相続人も原則として異議を唱えることはできません。

しかし、遺言書が偽造された場合や、他の相続人が、判断力の衰えた遺言者を利用して不公平な内容の遺言をさせたような場合など、遺言内容のとおりに遺産を分割することが適切ではないケースもあります。

そこで、遺言が無効と考えられるときには、遺言無効確認請求訴訟によって、その効力を争うことが認められているのです。

裁判所の判決で遺言が無効であることが確認

 

されると、その遺言はなかったことなり、各相続人は遺言がないものとして遺産分割協議をすることになります。

2: 遺言の無効を主張するための理由

遺言無効確認請求訴訟を提起するためには、当然ながら遺言の無効を主張できる理由がなければいけません。

法律上、遺言の無効を主張できるのは以下のケースです。

自筆証書遺言の形式的な不備

自筆証書遺言は、遺言者が本文と日付、氏名を自筆し、押印して作成するものですが、形式的な不備により無効となることが少なくありません。

自筆証書遺言の形式は法律で厳格に定められているため、法律の知識が乏しい方が1人で作成すると、形式的な不備が生じやすいのです。

よくある形式的な不備として、次のようなものが挙げられます。

・パソコンまたは代筆で作成された(財産目録は除く)
・日付(年月日)が記載されていない
・日付が「吉日」等と記載されていて、年月日を特定できない
・複数の人(夫婦など)の連名で作成されている
・修正方法を誤っている(修正液や修正テープが使用されているなど)

これらの自筆証書遺言は、すべて無効となります。

もっとも、形式的な不備は客観的に明らかなので、遺言無効確認請求訴訟を提起してまで争われることは少ないです。

それでも、遺言書の偽造や改ざんを主張して遺言無効確認請求訴訟が提起されることはあります。

遺言者の意思能力の欠如

遺言者が遺言時に意思能力を欠いていた場合は、遺言の形式を問わず、その遺言は無効となります。

遺言は自分の財産を処分する意思表示ですので、有効な遺言をするためには、正常に意思決定を行えるだけの能力が要求されます。具体的には、遺言の内容、およびその遺言によって生じる法的な効果を理解し、判断できるだけの意思能力が必要です。

実務上、遺言者が遺言書作成時に認知症であったため、意思能力の欠如を理由として遺言の効力が争われるケースが非常に多いです。

ただし、認知症の症状の内容や程度は様々ですので、認知症の診断を受けていただけで、正常な意思能力が否定されるわけではありません。遺言に必要な意思能力があったかどうかは、個別のケースごとに、具体的な状況を総合的に考慮して判断されます。

なお、遺言者が15歳未満だった場合も、十分な意思能力がないと考えられるため遺言は無効とされています。

遺言が脅迫や詐欺の影響を受けた場合

脅迫(民法上は「強迫」といいます。)や詐欺の影響を受けて行われた遺言は、取り消すことが可能です。取り消せば、その遺言はなかったことになります。

例えば、次のようなケースでは遺言の取り消しが可能と考えられます。

・親が子どものうち1人から「俺の取り分を多くしろ」と脅され、「長男にすべての財産を譲る」という遺言をした

・親が配偶者から「子どもたちと話し合った結果、私がすべてを引き継ぐことになった」と騙され、「配偶者にすべての財産を譲る」という遺言をした。

ただし、遺言を取り消せるのは遺言をした本人です。遺言者本人が亡くなった後は取り消せません。

そこで、遺言者の死亡後は、真意が反映された遺言ではないことを理由として、相続人が遺言無効確認請求訴訟を提起することになります。

もっとも、遺言者の死亡後に強迫や詐欺の事実を証明することは難しいケースが多いため、遺言無効確認請求訴訟を提起して争われるケースは少ないです。

3: 訴訟の進め方と必要な証拠

次に、遺言無効確認請求訴訟の進め方と、必要な証拠について解説します。

訴訟を起こす際の手続きと提出する書類

遺言無効確認請求訴訟を起こす場合、調停を申し立てる方法もあります。ただし、最初から弁護士に依頼して、遺言無効確認訴訟を提起する方が解決の早いことが多いです。

調停を申し立てた場合、調停不成立となった場合は、地方裁判所(遺産総額が140万円を超える場合)または簡易裁判所(遺産総額が140万円以下の場合)へ、遺言無効確認請求訴訟を提起します。

訴訟手続きでは、原告・被告双方が主張と証拠を提出し合い、証人尋問や本人尋問を経て、最終的に裁判所の判決によって遺言の有効・無効が判断されます。

遺言無効確認の調停・訴訟を行うためには、以下の書類が必要です。

・申立書(調停の場合)、訴状(訴訟の場合)
・当事者目録
・遺産目録
・相続関係図見本
・申立ての実情(調停の場合)
・相続人全員の住民票(3ヶ月以内に取得したもの)
・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本類
・遺言書
・遺言無効を裏付ける証拠

この中でも特に重要となるのが、有力な「遺言無効の証拠」を準備することです。

証拠収集のポイントと重要性

遺言無効確認請求訴訟で勝訴するためには、無効の理由となる事実を客観的に証明できる証拠が必要です。訴訟では、証拠の裏付けのない主張は認められないため、証拠を確保しておくことは極めて重要となります。

収集すべき証拠は、主張する理由よって異なります。

遺言書の偽造や改ざんを主張する場合なら、遺言者本人が記載したものではないことを証明するために、筆跡鑑定を行うことになるでしょう。その資料として、遺言者本人が書いた日記や手紙、メモなどが必要です。

意思能力(遺言能力)の欠如を主張する場合なら、遺言当時の病状(意思能力の程度)を証明するために、診断書やカルテなどの医療記録、医師の鑑定書や意見書、介護記録などが必要です。遺言者本人や家族の日記なども、当時の病状を立証できる証拠となることがあります。

4: 遺言無効確認請求訴訟におけるリスクと注意点

遺言無効確認請求訴訟を起こす前に、以下のリスクと注意点も知っておきましょう。

訴訟に伴う費用と時間

遺言無効確認請求訴訟を起こすためには、以下の費用が必要です。

裁判所へ納める費用
調停申し立て時

・申立手数料(印紙代):1,200円
・郵便切手:1,240円分(当事者が1名増すごとに380円分を追加)
※郵便切手代は裁判所により若干異なります。
訴訟提起時

・訴え提起手数料(印紙代):遺産総額により異なる
※一例として、遺産総額が5,000万円なら印紙代は17万円です。
・郵便切手:6,000円(当事者が1名増すごとに2,440円分を追加)
※郵便切手代は裁判所により若干異なります。

弁護士に手続きを依頼する場合には、別途、弁護士費用がかかります。

弁護士費用の金額は依頼する事務所によって異なりますし、事案の内容や依頼するタイミング、最終的な結果によっても変わってきます。

遺産額によっても異なりますが、大まかにいって、着手金は最低でも50万円程度はみておいた方がよいでしょう。調停、訴訟へと順次進む場合には、各段階で追加の着手金がかかることもあります。

報酬金は、最終的な結果に応じて算出されます。一例として、遺言の無効が確認され、最終的に3,000万円の遺産を取得した場合の報酬金は、取得金額の10%程度が相場と言われています。

遺言無効確認請求訴訟にかかる時間も事案ごとに異なりますが、比較的に長期間を要する傾向にあります。

第一審の判決に納得できない当事者がいる場合は、控訴が行われることもあります。その場合はさらに、控訴審で6ヶ月~1年程度の期間をみておいた方がよいでしょう。

遺言無効確認訴訟で勝訴した後には、さらに遺産分割協議を行う必要があります。裁判上の和解で遺産分割協議を完了できる場合もありますが、一般的には遺産分割調停・審判を要するケースが多いです。

トータルでみると、遺言の無効を主張する場合には最終的な解決までに数年を要することが多いです。

訴訟の結果が他の相続人に与える影響

遺言無効確認請求訴訟で勝訴すると遺言が無効となりますが、その効力が生じるのは訴訟の当事者の間のみです。

例えば、父親が亡くなり、相続人として母親と長男、二男がいるケースで、二男が長男のみを被告として遺言無効確認請求訴訟を提起したとしましょう。

この場合、二男が勝訴したとしても、母親には遺言無効の効力が及びません。そのため、母親が「遺言は有効」と主張し始めた場合には、二男は改めて家事調停や遺言無効確認請求訴訟で遺言の効力を争う必要性が生じます。

そのため、遺言無効確認請求訴訟を提起するときは、自分以外の相続人全員を相手取った方がよいでしょう。

5: 弁護士に相談するメリット

遺言の無効を訴えたい場合は、まず弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談するだけでも、遺言の無効を主張できる理由があるかどうかを的確に判断してもらえます。

トラブル解決を弁護士に依頼すれば、相続人間での話し合いから、遺言無効確認請求訴訟、その後の遺産分割協議、調停・審判に至るまで、全面的にサポートを受けることが可能です。

特に、弁護士への依頼は早期解決につながりやすいといえます。

既にお伝えしたように、遺言無効確認請求訴訟で勝訴したとしても、その後に遺産分割協議、必要に応じて遺産分割調停・審判を行わなければ、遺産を適切に分割することができません。

しかし、遺言無効を訴えて家事調停を申し立てる前の話し合いで合意できれば、早期解決が可能です。

トラブルを早期に解決することで、費用負担の大幅な軽減にもつながります。

納得できない遺言書が見つかったときは、早めに弁護士へご相談の上、適切に対処していきましょう。なお、弁護士法人リーガル東京は、遺言無効の係争について数多くの解決事案を持ち、適切なアドバイスを提供できます。是非ご相談ください。

この記事の監修者

弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)

小林 幸与(こばやし さちよ)

〇経歴

明治大学法学部卒業、昭和61年に弁護士登録。現在は第一東京弁護士会所属の弁護士に加え、東京税理士会所属の税理士、日本FP協会認定AFP資格者。

日弁連代議員のほか、所属弁護士会で常議員・法律相談運営委員会委員・消費者問題対策委員会委員など公務を歴任。

豊島区で20年以上前から弁護士事務所を開業。現在は銀座・池袋に事務所を構える「弁護士法人リーガル東京・税理士法人リーガル東京」の代表として、弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナーの三資格を活かし活動している。

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