相続で遺留分がもらえない場合の対策を相続に強いベテラン弁護士が解説!

ご親族の死亡により起こる遺産相続において、本来もらえるはずの財産がもらえないという事態は、単に金額の問題だけでなく、ご家族の絆やこれまでの想いまで否定されたような悲しい気持ちになるものです。
両親が、特定の兄弟姉妹だけが得をする内容の遺言書(例―長男〇太郎に全財産を相続させる)をしていた……。こうした不公平な状況に対し、あなたが納得できないと思った時、あなたの立場を救うための強力な法的権利が、遺留分(いりゅうぶん)という制度です。
そもそも遺留分とは?:一定の親族に保障された最低限の取り分
遺留分は遺言よりも強い権利
相続において、亡くなった人(被相続人)の意思は最大限に尊重されます。そのため「特定の人物に全財産を遺す」「全財産は慈善団体に寄付する」などの内容で、有効な遺言を作成した場合、その通りに遺産が承継されます。
しかし、残された家族にも、これからの生活があります。遺族が充てにしていた財産が他人に移ってしまったら、配偶者や子供たちは路頭に迷ってしまうかもしれません。そこで、日本の相続法が認めている制度が遺留分(いりゅうぶん)です。
遺留分とは、一定の相続人が、最低限受け取ることが保障された相続財産の割合のことを指します。たとえば両親が遺言書に「〇○長女には一円も遺さない」と書いていていたとしても、子の遺留分は相続法で保障されており、両親の死後に遺留分の請求ができるのです。
遺留分が認められる人(遺留分権利者)
遺留分は、法定相続人(法律で定められた相続人)全員に認められるわけではありません。認められるのは以下の範囲の人に限られます。
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配偶者(夫や妻)
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子(相続開始前に子が亡くなっている場合は孫等の代襲相続人)
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直系尊属(sw先順位の子や孫がいない場合の父母や祖父母)
ここで注意が必要なのは、兄弟姉妹(およびその子供である甥・姪)には遺留分がないという点です。先順位の相続人が兄弟姉妹だけという人が、「弟には何も相続させない。妹に全財産を相続させる。」という遺言を残して亡くなった場合、弟は妹に対し、遺留分を請求することはできません。
遺留分でもらえる割合
具体的に遺留分としてもらえる割合は、次のとおりです。。
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配偶者、子、子の代襲相続人の場合:: ⇒⇒各人の法定相続分の2分の1
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直系尊属(父母など)が相続人の場合: 各人の法定相続分の3分の1
例えば、相続人が配偶者と子供2人の場合、本来の法定相続分は配偶者が2分の1、子供が各4分の1です。遺留分はその半分になるため、配偶者は4分の1、子供は各8分の1を最低限確保できる計算になります。
遺留分を計算するための基礎財産
法定相続分の2分の1といっても、いかなる財産の2分の1かが重要です。遺留分の計算対象には、ヒ被相続人が亡くなった時に有する財産(債務も含みます)だけでなく、被相続人から生前贈与された以下の財産も含まれます。
①亡くなる前1年間にされた贈与
相続人に対して行われた婚姻・養子縁組・生計の資本(住宅購入資金など)のための贈与(亡くなる前10年間分)
遺留分侵害額請求とは?:最低限の保障を得る具体的な手続
2019年の法改正で変わった金銭での解決
相続法改正前は遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)と呼ばれ、不動産などの現物を共有状態にして返すか、または遺留分義務者が価額弁償の形で金銭解決するという2つの解決方法がありましたが、2019年の相続法改正により、現在は遺留分侵害額請求(しんがいがくせいきゅう)という制度に変更されました。
遺留分侵害額請求は、自分の遺留分が侵害された(遺産を貰えなかった)分を、金銭(現金)で支払えと請求する権利です。 例えば、遺産が自宅とアパート(合計評価額9,000万円)三人の兄弟姉妹が相続人のケースで3遺言で長男に全て相続された場合、次男が遺留分1,500万円(9,000万円の6分の1)を遺産額として請求してbaai場合、長男が次男に1,5002万円の現金を支払うことで解決できます。
改正前の遺留分減殺請求の場合、価額弁償の意思表示(金銭で遺留分を支払う意思表示)を
しない場合、遺留分相当の遺産現物を渡那咲ければならず、アパート賃料も遺留分相当額を
取得できました。しかし改正後の遺留分侵害額請求では、その権利が無くなりました。
遺留分侵害額請求の流れ
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内容証明郵便の送付
まずは、遺留分を侵害された相手に対し、「私は遺留分を侵害されたので遺留分を請求します」という意思表示を相手に伝えます。その意思表示の方法は、公的に証明できる内容証明郵便で行うのが一般的であり、ベストな方法です。
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交渉(話し合い)
遺留分を侵害された相手方と、遺留分としていくら支払うのか、いつまでに支払うのか等を話し合います。
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遺留分侵害額の調停(裁判所)
話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所で調停委員を交えて話し合います。
もっとも弁護士に遺留分侵害の相談依頼をした場合、弁護士に依頼した交渉で解決できない場合には、調停をする必要がなくなることが通常です。
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訴訟(裁判)
裁判所に、訴訟提起し、訴訟上の和解または判決で解決することになります。
遺留分侵害額請求には、非常に厳しい期限があります
これを知らないと、せっかくの権利が消滅してしまいます。
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1年間の消滅時効:
- 相続が始まったこと、および自分の遺留分を侵害する贈与や遺言があったことを知った時から1年経過すると権利が時効消滅します。したがって遺留分を侵害された相続人は、相続開始後に遺留分侵害の事実を知った時は、遅滞なく内容証明郵便で遺留分の請求をすることが重要です。
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10年間の除斥期間:
- 相続開始から10年が経過したとき(相続開始を知らなくても権利が消えます)。
- 遺留分侵害額請求は、金銭債権です。したがって5年で消滅時効になると考えられますので、この点も注意が必要です。
相続の遺留分でよく揉めるケースとは? 具体例で解説

遺留分があるはずなのに、なぜかもらえないという状況には、いくつかのパターンがあります。実際の紛争事例を交えて見ていきましょう。
事例1:生前贈与で財産が空っぽになっていたケース
【相談内容】
父が亡くなり、相続人は長男tと次男である私の2人です。遺産を調べたら銀行の預金口座には200万円しかありませんでした。
しかし、父の生前、長男には家を建てる資金として3,000万円を贈与し、さらに事業資金として2,000万円を贈与していたことが判明しました。次男である私の遺留分は50万円(預金額の4分の1)と長男から言われました。私は父から贈与されたこともないので納得できません。
【解説】
亡くなった時の財産(遺産)がなくても、特別受益(とくべつじゅえき)があれば遺留分は発生します。 特別受益とは、特定の相続人が被相続人から受けた特別な利益(結婚資金の贈与、住宅購入資金の贈与、事業資金の贈与など)のことです。 改正民法により、遺留分義務者への生前贈与は、亡くなる前10年間における贈与が遺留分の計算の基礎財産対象に含まれます。この事例では、長男に対する贈与合計5,000万円を遺産に持ち戻して(遺産の中に足し戻し5200万円として)計算するため、次男は遺留分相当(5200万円の4分の1に相当する1300万円)を金銭で取得できる可能性があります。
事例2:兄弟姉妹が相続人であるケース
【相談内容】
生涯独身だった叔父が亡くなりました。姪である私が叔父の唯一の相続人です。ところが叔父は全財産を世話になった隣人に遺すという遺言を書いていました。 私は叔父の面倒を見てきたので、少しでも叔父の遺産をもらいたいのですが。
【解説】
兄弟姉妹(およびその代襲相続人である甥・姪)には遺留分がありません。叔父が書いた 遺言書が法的に有効であれば、その全額が受遺者(隣人)に渡り、親族であっても取り戻す手段は基本的にありません。叔父の遺産を取得した隣人と交渉して、姪である貴女の状況に少しでも叔父の遺産から贈与をしてもらえるよう御願いしてはいかがでしょうか。それが難しければ叔父の遺言書の不備(無効)を争うなどの別のアプローチが必要になります。
事例3:遺産が不動産のみで遺留分を拒否されるケース
【相談内容】
父が亡くなり、相続人は兄と妹の私の二人です。父は自宅である土地建物を同居していた兄に相続させるという遺言を残していました。私は兄に対し遺留分侵害額請求をしたいのですが、兄から「遺産は古い自宅だけで現金は一切ない。自宅を売るわけにはいかない。遺留分は払えないから諦めてくれ」と言われています。遺産が自宅不動産しかない場合、私は一円ももらえないのでしょうか。
【解説】
相続法改正により、遺留分は「遺留分侵害額請求」という制度になり、遺留分は金銭で解決する仕組みになりました。兄から「現金がないから遺留分は払わない」と言われたとしても、遺留分を諦める必要はありません。 兄に居住している自宅の売却を強制できません。しかし兄が自分名義の貯金を切り崩したり、あるいは自宅不動産を担保にローンを組むなどして、金銭を作ることができますから、兄は遺留分一括を金銭で支払う義務を負います。 兄が即時の一括支払いが困難な場合は、裁判所に申し立てて支払い期限を猶予してもらう制度(期限の許容)もあります(民法104 77条gokai第5項)。
事例4:遺留分請求が時効で消滅したと言われたケース
【相談内容】
父が亡くなり、相続人は母と長男である兄と次男である私の3人です。父の遺言で全ての財産が長男に渡ったことは葬儀の時に知っていましたが、父の死から半年後に母が亡くなり、揉めたくなかったので母の死後1年位黙っていました。最近になり、やはり遺留分を貰いたいと考え直したのですが、今からでも遺留分の請求ができますか。
【解説】
遺留分侵害額請求には「1年」という非常に短い消滅時効があります。具体的には「相続の開始および遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った時」から1年以内に遺留分侵害額請求の意思表示をしなければなりません。 父の死と遺言の内容を知ってから1年半経過していたのであれば、残念ながら既に時効が成立しており、次男であるあなたの遺留分の権利は消滅してしまっています。内容証明郵便を送るなど、1年以内に「遺留分を請求する意思」を明確に示すべきでした。もっとも母親の遺留分侵害額請求については消滅時効が成立していない可能性もありますので、母親の遺留分侵害額請求を相続したとして内容証明郵便を送ることを検討した方が良いでしょう。
遺留分侵害額請求が認められない場合とは?
遺留分の請求したからといって、必ず希望した金額をもらえるわけではありません。法的に認められないケースや減額されるケースを説明します。
1. 期限(時効期間1. 年・除斥期間10年)を過ぎている
これが最も多いもらえない理由です。 四十九日が過ぎてから……一周忌が終わって落ち着いてから……と考えているうちに1年が経過してしまうケースが後を絶ちません。内容証明郵便一通出すだけで時効は止まりますが、その一歩が遅れると、何千万円という権利が法的に消滅してしまいます。
2. 債務(借金)が多く、純資産がマイナスである
遺留分の計算はプラスの財産からマイナスの財産(借金)を引いた額がベースです。 例えば、時価5,000万円の不動産があっても、住宅ローンが6,000万円残っていれば、遺留分の基礎となる財産はゼロ(マイナス)です。この場合、遺留分侵害額請求は認められません。
3.生前贈与を受けている。
被相続人から遺産を貰った人に遺留分を請求しようとする場合、遺留分請求者が、被相続人から生前贈与を受けていた場合、生前贈与された金額が遺留分から控除されます。例えば、相続人が長男次男の2人で、長男が5千万円相当の遺産を父の遺言で相続した場合次男の遺留分は1250万円すが、次男が生前父から1000万円の生前贈与を受けていた場合、遺留分が減額されて250万円なります。
遺留分権利者が遺留分額から控除される遺留分は、遺留分義務者と異なり、生前贈与時期による制限はないので、注意が必要です。
4. 相続廃除(はいじょ)を受けている
被相続人に対して虐待をしたり、重大な侮辱を加えたりした相続人は、生前に被相続人が家庭裁判所に申し立てることで、相続権そのものを剥奪されることがあります。これを相続廃除(そうぞくはいじょ)といいます。廃除された場合遺留分も失います。
遺留分侵害額請求で弁護士を活用するメリット
遺留分の問題は、法律知識だけでなく、複雑な計算や相手方との感情的な対立が伴います。弁護士に依頼することで、以下のような大きなメリットが得られます。
メリット1:隠れた財産や生前贈与を徹底調査できる
相手方が遺産はこれだけだと嘘をついている可能性があります。弁護士は弁護士照会(23条照会)などの職権を使い、銀行や証券会社の取引履歴を過去に遡って調査し、役所で固定資産台帳などを調べたり、生命保険会社の保険契約の照会をしたり、不動産の登記情報を精査したりすることが可能です。 特に生前贈与や高額の死亡保険金を見つけることができれば遺留分額を増やすための鍵となります。素人では辿り着けない証拠を掴ムむのは弁護士の仕事です。
メリット2:正確な遺留分額の計算ができる
遺留分の計算は、単純な割り算ではありません。 不動産の評価額をいくらに設定するか(固定資産税評価か、路線価か、時価か)10年以上前の贈与は含まれるか特別受益に該当するかなど、争点は多岐にわたることが少なくありません。弁護士に依頼すればあなたにとって最も有利な、かつ法的に整合性のある遺留分金額を算出できます。
メリット3:精神的なストレスからの解放
相続トラブルの多くは、親族間での感情のぶつかり合いです。直接話をすると、どうしても昔の恨みつらみが出てきてしまい、建設的な話し合いにならないことが多いのです。
弁護士があなたの代理人となることで、相手方と直接話す必要がなくなります。法的な根拠に基づいた交渉を弁護士に任せることで、日常生活の平穏を取り戻すことができます。
メリット4:迅速な手続きで時効を防ぐ
前述の通り、遺留分には1年という短い時効があります。弁護士に依頼すれば、即座に内容証明郵便を作成・送付し、あなたの権利を確定させます。何をすればよいのか悩んでいる間に遺留分の権利が無くなったという最悪の事態を回避できます。
メリット5:紛争の長期化を防ぎ、最適な着地点を見つける
調停や訴訟になると、解決まで2年位かかることも珍しくありません。弁護士は裁判になった際の見通しを熟知しているため、交渉の段階で、どういう条件で合意するのふが、時間的にも費用的にも最も得であるという現実的なアドバイスができます。
遺留分でお悩みの方は当事務所まで
相続は、亡くなった方を偲ぶ大切な儀式であるはずですが、現実には遺産を巡る激しい争い(争続)に発展してしまうことが少なくありません。
特に遺留分の問題は、もらえるはずのものがもらえないという不公平感から、深い心の傷を負う方も多いです。しかし、法律は権利を主張するヒ人を守るためにあります。あなたが勇気を持って一歩踏み出し、正当な権利を主張することは、欲が深いわけでも身勝手でもありません。
自分はいくらもらえるのか?このケースで請求できるのか? 少しでも疑問や不安を感じたら、一人で悩まずに、まずは弁護士法人リーガル東京の無料相談をご利用ください。
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この記事の監修者

弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)
小林 幸与(こばやし さちよ)
〇経歴
明治大学法学部卒業、昭和61年に弁護士登録。現在は第一東京弁護士会所属の弁護士に加え、東京税理士会所属の税理士、日本FP協会認定AFP資格者。
日弁連代議員のほか、所属弁護士会で常議員・法律相談運営委員会委員・消費者問題対策委員会委員など公務を歴任。
豊島区で20年以上前から弁護士事務所を開業。現在は銀座・池袋に事務所を構える「弁護士法人リーガル東京・税理士法人リーガル東京」の代表として、弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナーの三資格を活かし活動している。




















