生前贈与された不動産は遺産分割の対象?相続に強い弁護士兼税理士が解説!

「亡くなった父が、生前に長男へ実家の土地を贈与していた。この不動産は、遺産分割のときにどう扱われるのだろうか」
生前贈与された不動産をめぐるご相談は、相続の現場で非常に多く見られます。
すでに贈与されて名義も移っている不動産は、遺産分割の対象になるのか、それとも一切関係ないのか。実はこの問題は、「遺産分割の対象になる・ならない」と単純に割り切れるものではなく、多くの方が誤解しがちなポイントでもあります。この記事では、相続に強いベテラン弁護士が、生前贈与された不動産と遺産分割の関係を、具体例を交えてわかりやすく解説します。
1. そもそも生前贈与された不動産は遺産分割の対象になる?
生前贈与によって、すでに贈与を受けた人(受贈者)の名義になっている不動産は、原則として遺産分割そのものの対象にはなりません。遺産分割とは、亡くなった時点で被相続人(亡くなった方)が持っていた財産を、相続人間で分ける手続きです。生前に贈与された不動産は、贈与した時点で受贈者の所有物になっているため、亡くなった時点では被相続人の財産ではないからです。
ただし、遺産分割の「対象財産」にはならなくても、具体的な相続分を計算するうえでは考慮されることがあります。これが、後ほど説明する「特別受益」という考え方です。まずは、「遺産である不動産そのものの取り合いにはならないが、相続分の計算上は無視されない場合がある」という相続法の決まりを、頭に入れておきましょう。
2. なぜ対象外なのか?弁護士兼税理士が解説!
贈与とは、財産をあげる人ともらう人の合意によって成立する契約であり、不動産であれば、贈与を原因とする名義変更(登記)がなされ、法的にも受贈者が所有者として扱われます。
相続が始まった時点で被相続人の所有名義でない以上、その不動産はもはや「遺産」ではありません。遺産分割は、あくまで相続開始時に残っていた財産を分ける手続ですから、すでに他人の所有物になっているものを対象にできないのは当然といえます。
一方で、税務の視点も欠かせません。生前贈与には贈与税がかかる場合があり、また、相続開始前の一定期間内(2024年1月以降の贈与については、加算される期間が従来の3年から段階的に7年へ延長されています)に行われた贈与は、相続税の計算上、相続財産に加算されることがあります。
つまり、「遺産分割では対象外でも、税金の計算では持ち戻される」というケースがあるのです。相続法上の分割内容と相続税法上の取扱いは別物である——この点を正しく理解しておくことが、後々のトラブル回避につながります。
3. 特別受益の「持ち戻し」とは?
「特別受益」とは、相続人の中に、被相続人から生前贈与などで特別な利益を受けた人がいる場合の、その利益のことをいいます。具体例で説明します。父親が亡くなり、相続人は長男次男の2名だけというケースで、長男だけが実家の不動産(5000万円相当)を父親から生前にもらい、次男は何ももらっていなかったとします。
両親が亡くなった時点に残っていた財産(3000万円相当)だけを兄弟間で均等に分けると、長男は「土地5000万円+遺産(3000万円)の半分」を得て、明らかに有利になってしまいます。そこで相続法は、公平を保つために「持ち戻し」という仕組みを用意しました。「持ち戻し」とは、生前贈与された財産の価額を、いったん遺産に足し戻して計算上の相続財産(これを「みなし相続財産」といいます)を求め、それをもとに各相続人の取り分を決める方法です。長男の取り分からは、すでに受け取った土地の価額が差し引かれます。
前例で長男が生前贈与された不動産の価格が5000万円、亡父親の遺産額が3000万円であることから【(5000万円+3000万円)÷2=4000万円(相続分)】として計算し、長男は既に5000万円相当の不動産を取得していたので、長男相続分0円となり、次男は遺産3000万円を全部相続できることになります。「早くもらった人」と「まだもらっていない人」との間の不公平が是正されるのです。生前贈与された不動産が遺産分割の対象そのものにはならなくても、この持ち戻しを通じて相続分の計算に反映される——これが、先ほどお伝えした相続法の決まりです。
4. どんな生前贈与が特別受益になる?
全ての生前贈与が特別受益になるわけではありません。相続法は、婚姻や養子縁組の為の贈与や生計の資本としての贈与を、特別受益にあたるとしています。典型的な例は、住宅取得のための資金援助や、事業を始めるための開業資金、不動産の贈与などです。親が子を扶養する範囲の生活費や、常識的な範囲のお祝い金などは、通常は特別受益にはあたりません。
不動産の生前贈与は金額が大きくなりやすいため、特別受益と判断されるケースが多いといえます。ただし、被相続人が「この贈与は相続分とは別に与えたものだから、持ち戻さなくてよい」という意思を示していた場合(これを「持ち戻し免除の意思表示」といいます)には、計算に加えないことができます。
さらに、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用の不動産(自宅やその敷地)が贈与された場合には、持ち戻しを免除する意思があったものと推定される、という配偶者を保護するためのルールも設けられています。どの贈与が特別受益にあたるかは、個々の事情によって判断が分かれるため、実務では専門家による見極めが重要になります。
5. 生前贈与された不動産はいくらで評価する?評価額の基準
特別受益として持ち戻す場合、必ず問題になるのが「その不動産をいくらと評価するか」です。ここは多くの方が誤解しやすいところなので、しっかり押さえておきましょう。結論として、遺産分割や特別受益の計算における不動産の評価は、「贈与を受けた時点の価格」ではなく、「相続が開始した時点(被相続人が亡くなった時点)の時価」で行うのが、実務の原則です。
たとえば、贈与を受けた10年前に1000万円だった土地が、相続開始時には1800万円へ値上がりしていたとします。この場合、持ち戻す金額は、贈与時の1000万円ではなく、相続開始時の1800万円で計算します。「もらったのは昔の話だから、当時の値段でよいはず」という思い込みで進めてしまうと、他の相続人との間で大きな認識のズレが生じ、争いの火種になりかねません。なお、注意したいのは、ここでいう「時価」と、相続税や贈与税を計算するときの評価額は、まったく別物だという点です。
税金の計算では、土地は「路線価(国税庁が道路ごとに定める1㎡当りの価格)」、建物は「固定資産税評価額」といった基準を用いるのが一般的で、これらは実際の売買価格(時価)より低めに設定されることが多くあります。「遺産分割上の評価」と「税務上の評価」という2つの異なる価値基準を正しく使い分けることが、適切な解決には重要です。
6. 実際に不動産相続で揉めやすいケースとは?
不動産が絡む相続は、金額が大きく、しかも簡単には分けられないケースが多いため、トラブルに発展しやすい分野です。「トラブルになりやすいケース」をご紹介します。ひとつ目は、「特定の相続人だけが生前に不動産をもらっていた」ケースです。
他の相続人が特別受益の持ち戻しを主張し、持戻しの可否や贈与された不動産の評価額をめぐって対立が深まることが少なくありません。ふたつ目は、「遺産である不動産の評価額そのもので意見が食い違う」ケースです。各相続人が自分に有利な評価額を主張し、話が前に進まなくなりがちです。三つ目は、「主な遺産が不動産しかない」ケースです。
実家の土地建物を複数の相続人でどう分けるかは難問で、土地建物を売却して現金で分ける、一人が取得して他方に金銭を支払う(代償分割)など、選択肢ごとに利害が対立します。いずれのケースも、感情的な対立が絡むと解決が長期化しやすいのが特徴です。早い段階で、不動産の評価と解決方法を検討しておくことが、円満な解決への近道となります。
7. 弁護士兼税理士に不動産相続を依頼するメリットとは?
不動産の生前贈与が関わる相続は、「遺産分割上の評価額」と「相続税務上の評価額」という2つのものさしが交錯し、法律と税金の知識と実務経験がともに求められる、非常に専門性の高い分野です。
ここで力を発揮するのが、弁護士と税理士、双方の視点を併せ持つ専門家です。弁護士は、特別受益の主張や持ち戻しの計算、評価額をめぐる相続人間の交渉、話し合いがまとまらない場合の調停・審判といった「争いの解決」を担います。
一方、税理士の視点があれば、生前贈与や生命保険活用等を利用した相続税節税対策、相続開始後は、税務申告での税制上の各種特例活用、将来売却する際にかかる譲渡税まで。ご家族全体にとって最も負担の少ない解決方法を提案することができます。
たとえば「遺産である不動産を売って相続人間で分けるのか(換価分割)、相続人の一人が相続して他の相続人は代償金を貰うのか(代償分割)、相続人が共同相続するのか(現物分割)」という判断ひとつをとっても、選択によって税負担は大きく変わります。代償分割や現物分割であれば相続税の課税額だけ考えればよいですが、換価分割となれば相続税と譲渡税を検討しなければなりません。法律面だけ、あるいは税務面だけを切り離して考えると、かえって損をしてしまうことも少なくないのです。両方の知識を一つの窓口でまとめて受けられることこそ、弁護士兼税理士へ相談する何よりの強みなのです。
8. 不動産の相続でお悩みなら当事務所まで
生前贈与された不動産は、遺産分割そのものの対象にはならなくても、特別受益の持ち戻しを通じて相続分の計算に影響します。
そして、その評価は相続開始時の時価で行うのが原則であり、相続税務上の評価とは分けて考えなければなりません。こうした仕組みを正しく理解しないまま話し合いを進めると、思わぬ不公平や対立を招いてしまいます。
当弁護士法人は、弁護士兼税理士である代表が、法律と税務の両面から、数多くの不動産相続のお悩みに向き合ってまいりました。
「生前贈与があったが、どう分ければ公正公平なのかわからない」「不動産の評価をめぐって家族の意見が割れている」
そんなお悩みも、どうぞお一人で抱え込まないでください。初回のご相談は無料で承っております。
まずはお気軽にご連絡いただき、あなたとご家族にとって最善の解決策を、私たちと一緒に見つけていきましょう。
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この記事の監修者

弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)
小林 幸与(こばやし さちよ)
〇経歴
明治大学法学部卒業、昭和61年に弁護士登録。現在は第一東京弁護士会所属の弁護士に加え、東京税理士会所属の税理士、日本FP協会認定AFP資格者。
日弁連代議員のほか、所属弁護士会で常議員・法律相談運営委員会委員・消費者問題対策委員会委員など公務を歴任。
豊島区で20年以上前から弁護士事務所を開業。現在は銀座・池袋に事務所を構える「弁護士法人リーガル東京・税理士法人リーガル東京」の代表として、弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナーの三資格を活かし活動している。




















