兄弟間の遺産分割調停がまとまらず、遺産(不動産持分)を競売にした事例
相談者
東京都在住 荒木様(仮名・50代・男性)
相談内容
荒木様は7人の兄弟姉妹ですが、妻子のいない兄甲が亡くなり、荒木様を含む6人の兄弟姉妹が相続人になりました。
兄甲は23区内に4億円相当の不動産を所有していたほか、預金が1億円以上ありました。
兄弟姉妹間で遺産分割の話し合いが行われましたが、姉乙が他の兄弟姉妹の言うことを聞かず、姉乙が、荒木様を含む他の兄弟姉妹と預金先の銀行を被告として、訴訟を起こしたことから、弁護士会の紹介で小林弁護士が相談を受け、荒木様を含む5人の兄弟姉妹の訴訟代理人になりました。
弁護士の対応と結果
姉乙は、本人訴訟で、荒木様を含む兄弟姉妹5人に法的主張が曖昧な損害賠償請求をしていました。裁判所での和解の席で、荒木様側が姉乙に対し、訴訟の場で兄甲の遺産分割の協議もしたいと申し出ましたが、拒否され、結局判決となりました。
当然のことながら、荒木様側が訴訟に勝ちましたが、兄甲の遺産について賦課された高額の相続税(6人分―連帯納付義務があるため)を支払うために、兄甲名義の預金払戻をしなければなりませんでした。しかし姉乙が協力しないため、遺産である預金を払い戻して相続税の納付に充てることができませんでした。
現在の銀行実務では、預金払戻をするには相続人全員の同意を要求しているからですが、法律的には預金は金銭債権(分割債権)ですので、各相続人が法定相続分に相当する預金額を単独で払戻請求できるのです。このことは最高裁判所判例も認めています。
預金先の銀行は、姉乙から意味不明の訴訟を起こされたことから、荒木様兄弟姉妹の事情をよく知っていましたので、姉乙を除く兄弟姉妹5人が預金払戻のために銀行に5人の相続分合計額に相当する預金払戻を請求する支払督促を提起することを了解してくれました。
荒木様側は、その結果払い戻された預金で6人分の相続税を完納しましたが、相続税の精算と未分割の他の遺産(不動産)について、姉乙側と協議するため、遺産分割調停を起こしました。
しかし調停での話し合いが付かず、姉乙の相続税約1500万円の立替分について支払を求める訴訟を提起し、勝訴判決を得て債務名義をとりました。そこで遺産である不動産に法定相続分の相続登記(兄弟姉妹6人の共有登記)をして、姉乙の不動産持分を差し押え、強制競売により、立替金全額を回収できました。
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この記事の監修者
弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)
小林 幸与(こばやし さちよ)
〇経歴
明治大学法学部卒業、昭和61年に弁護士登録。現在は第一東京弁護士会所属の弁護士に加え、東京税理士会所属の税理士、日本FP協会認定AFP資格者。
日弁連代議員のほか、所属弁護士会で常議員・法律相談運営委員会委員・消費者問題対策委員会委員など公務を歴任。
豊島区で20年以上前から弁護士事務所を開業。現在は銀座・池袋に事務所を構える「弁護士法人リーガル東京・税理士法人リーガル東京」の代表として、弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナーの三資格を活かし活動している。