内縁の妻と相続について
内縁関係とは
内縁関係とは,事実上の婚姻関係にありながら,婚姻届を出していない事が理由で法律上の婚姻関係が認められない関係のことを言い,内縁関係にある男女を「内縁の夫」「内縁の妻」といいます。
被相続人の「配偶者」は相続権を有していますが,内縁の夫・妻は法律上の婚姻関係を有していないため「配偶者」にあたらず,お互いに相続権はありません。
何十年にもわたって事実上の夫婦として生活しようとも,婚姻届を提出していない以上,弁護士を立てようが裁判をしようが,内縁関係のままでは夫婦として相続することは認められません。
ただし,内縁の夫婦の一方が亡くなり,その者に法定相続人がいない場合,残された内縁の妻(夫)は,家庭裁判所に請求をして,特別縁故者として被相続人の相続財産を受け取れる場合があります。家庭裁判所に特別縁故者として認められるためには,自分が被相続人と特別の縁故があったことを裏付けと共に主張する必要があり,弁護士に依頼するのが確実です。
また,特別縁故者の制度の他に,法律上及び判例上,借家権については内縁の夫婦に対して特別の配慮がなされています。
まず,AとBが内縁関係にあり,Aがアパートなどの建物を借りてBとそこで同居生活を送っていた場合に,Aが死亡し,Aに相続人がいなかった場合には,残されたBは内縁関係にあったAの借家権を承継することができるとされています(借地借家法36条1項前段)。自分のケースで借家権を承継することができるかどうかについては,弁護士に相談すると良いでしょう。
一方,上記の例で被相続人AにCという相続人がいる場合には,借地借家法の規定は適用されず,BはAの借家権を承継することはできません。もっとも,判例は,CがBに対して建物明渡請求をした事案について,様々な事情を考慮してCの請求が権利の濫用にあたると判断しています。残された内縁の妻(夫)に対する建物明渡請求が具体的にどのような場合に権利の濫用となるかについては,弁護士に相談してください。借家権をめぐって訴訟などを起こされた場合は,弁護士に代理を依頼すべきです。
以上のように,きわめて例外的に内縁の妻(夫)が財産を承継できる場合はありますが,いずれの場合も,法律・判例の解釈や特殊な家庭裁判所での手続等が必要になるので,弁護士に相談・依頼するのが確実といえます。
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この記事の監修者
弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)
小林 幸与(こばやし さちよ)
〇経歴
明治大学法学部卒業、昭和61年に弁護士登録。現在は第一東京弁護士会所属の弁護士に加え、東京税理士会所属の税理士、日本FP協会認定AFP資格者。
日弁連代議員のほか、所属弁護士会で常議員・法律相談運営委員会委員・消費者問題対策委員会委員など公務を歴任。
豊島区で20年以上前から弁護士事務所を開業。現在は銀座・池袋に事務所を構える「弁護士法人リーガル東京・税理士法人リーガル東京」の代表として、弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナーの三資格を活かし活動している。